東京地方裁判所 平成7年(ワ)22797号 判決 1996年8月23日
主文
一 本訴被告(反訴原告)は本訴原告(反訴被告)に対し、四三〇万円及びこれに対する平成七年一一月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 反訴原告(本訴被告)の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、本訴被告(反訴原告)の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
理由
【事実及び理由】
第一 請求
(本訴)
主文一項と同じ。
(反訴)
反訴被告(本訴原告)は反訴原告(本訴被告)に対し、四三〇万円及びこれに対する平成七年九月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、<1>本訴被告(反訴原告、以下「被告」という。)から土地建物を購入した本訴原告(反訴被告、以下「原告」という。)が、銀行の住宅ローンの貸付けを受けられなかったことを理由として、右売買契約の住宅ローン利用特約条項に基づき右売買契約を解除したとして、それまでに原告から被告に支払っていた手付金及び中間金合計四三〇万円の返還とその遅延損害金の支払を求めた本訴事件と、<2>右解除の効力を否定する被告が、残代金支払についての原告の債務不履行を理由として、右売買契約の違約金の条項に基づき右売買契約を解除したとして、約定の違約金額八六〇万円からそれまでに原告から被告に支払っていた手付金及び中間金合計四三〇万円を控除した四三〇万円と解除の日の翌日からのその遅延損害金の支払を求めた反訴事件である。
一 (争いのない事実等)
1 原告と被告との間で、平成七年七月二二日、別紙物件目録記載一の土地及び同目録記載二の建物(以下別紙物件目録一の土地と同目録記載二の建物を併せて「本件土地建物」という。)について、被告を売主、原告を買主とし、代金四三〇〇万円とする次の内容の土地建物売買契約(以下「本件契約」という。)が締結された。
(一) 代金支払方法
<1> 契約時手付金一〇〇万円
<2> 平成七年七月二四日限り中間金三三〇万円
<3> 同年八月三一日限り本件土地建物引渡しと引換えに残金三八七〇万円
(二) 物件引渡日 平成七年八月三一日
(三) 失権約款
売主買主のいずれたるを問わず、当事者の一方が本件契約の条項の一つでも違反したときは、各々その違約した相手方に対して、所定の手続を経て、本件契約を解除することができる。
(四) 違約金
前項の場合、売主の義務不履行に基づくときは、売主は買主に対して、既に領収済みの手付金の倍額を支払わなければならない。また買主の義務不履行に基づくときは、売主に対して、既に支払済みの手付金の返還を請求することができない。また当事者の一方が本件契約の条項に違反し、期限を定めた履行の催告に応じないときには、相手方は本件契約を解除することができる。この場合の違約金は、次のとおりとする。
(1) 買主の違約によるときは、買主は売主に対し、違約金として八六〇万円を支払う。この場合、支払済みの金員を違約金に充当できる。
(2) 売主の違約によるときは、売主は買主に対し、違約金として八六〇万円を支払うこととし、かつ受領済みの金員を無利息で遅滞なく買主に返還する。
(五) 住宅ローン利用の特約(以下「本件ローン特約」という。)
(1) 買主は、本件契約締結後、遅滞なくローンの申込み手続をとるものとする。
(2) 前項の申込みにかかわらず、万一融資が否認された場合、あるいは金融機関との金銭消費貸借に関する保証委託契約が成立しないとき、買主は無条件にて本件契約を解除することができる。
この場合、売主は既に受領済みの金員を遅滞なく買主に返還するものとする。
(3) 右住宅ローン利用の特約に基づき本件売買契約を解除し得る期限は、平成七年八月一四日とする。
2 原告は被告に対し、本件契約に関し、平成七年七月二二日手付金一〇〇万円を、同月二四日中間金三三〇万円を支払った。
二 (争点)
1 原告は、本件ローン特約により、本件契約を解除し得るか。
(原告の主張)
原告は、平成七年七月二二日の本件契約締結後、同月二五日ころ、株式会社あさひ銀行に対し、三四四〇万円の住宅ローンの借入れ申込みを行ったが、右住宅ローン実行の条件として、あさひ銀クレジット株式会社又はあさひ銀保証株式会社の連帯保証がなされることが必要とされ、右ローン申込み時、原告は、あさひ銀クレジット及びあさひ銀保証に保証委託申込みをなした。
ところが、同年八月四日ころ、あさひ銀行の担当者から、あさひ銀クレジットでは、本件土地建物について、平成四年以降、その所有権移転登記がめまぐるしく移転し、更に所有権に関する訴訟も提起されていたことなどの事情から、所有権移転に疑義があるとして、原告に対する融資について、保証を引受けできないとの回答をしてきている、したがって、あさひ銀行から原告に対する住宅ローンの融資はできないと告げられた。
そこで、原告は、被告が本件土地建物の所有権を取得していることに法的問題がないことを、あさひ銀クレジットに理解を求め、本件住宅ローンについての保証を得られるべく再度働き掛けを行ったが、同月九日、原告は、あさひ銀行担当者から、最終的にあさひ銀クレジットの保証引受けはされないことになったと伝えられると共に、あさひ銀行の住宅ローンの貸付けはできないと伝えられた。
したがって、原告は、本件ローン特約により、本件契約を解除することができ、被告は、原告から既に受領済みの計四三〇万円を遅滞なく買主に返還すべき義務がある。
(被告の主張)
本件ローン特約でいうローンについては、申込み機関の限定又は特定がなく、ローン金額が予め具体的に定まっていないものであるから、本件ローン特約のローンは、必ずしも、原告がローン不成立であったと主張するあさひ銀行のローンを意味するものではない。また、被告は、本件ローン特約によって、その有効期間の平成七年八月一四日までは、たとえ、他に有利な買手が出現しても、本件土地建物を原告以外の第三者に売却することを禁止される不利益を負担しているのであるから、その当然の反射的信義則上の効果として、原告は、ローンを得て、本件物件を買い取るために真摯な努力を傾注しなければならない義務を負っている。すなわち、原告は、適正妥当な金融機関に対して、ローンの実現に向けた申込みを行う義務があるのであって、あさひ銀行にローンが否決されたとする原告の主張が仮に事実であるならば、物件の権利関係に疑義があるなどとして、根拠のない理由を付け、最初からローンを実行する意思のないことが明らかな金融機関に対しローンの申込みをして、それで本件ローン特約の申込み義務の履行は事足れりとされるものではない。原告提出のあさひ銀クレジット作成の保証辞退の通知が仮に真正なものであれば、同社は、本件土地建物の所有権移転に疑義があるとの何ら根拠のない理由をこじつけてローン保証の辞退理由としていると言わざるを得ない。このことは、物権変動に関する見識を有しない保証会社が、判断を誤っていたものであり、本件ローン特約は、かような不見識者の判断によるローンが得られない場合まで包含して、本件契約を解除し得ることを認めたものではない。原告が、あさひ銀行からローンの実行を受けられなかったことは、ひとえに不見識に基づきローン否決をする金融機関を選択した原告側の過失によるものであり、このことは、原告が融資実行の蓋然性のある金融機関に融資の申込みをなすべきところ、これをなさなかったと評価し得るものであるから、原告は、真の意味の本件ローン特約のローン申込み手続債務を履行したことにはならないといえる。
本件ローン特約は、ローン申込人たる原告の借受人適格に関する要件、例えば、原告の収入面における返済能力の問題、連帯保証人の保証能力に関する問題等の原告側の属人的要素により、ローンが否決された場合において、買主たる原告を本件契約から解放せんとする趣旨から設けられた規定である。したがって、本件土地建物の物的事情により、ローン不適用を決定したあさひ銀行のローンは、本件ローン特約でいうところのローンには含まれず、原告は、本件契約で、原告が負担するローンを受けるための原告側の手続義務を、いまだ果たしていないといえる。
原告は、本件契約締結当初から、ローンの借入れは絶対に大丈夫だと豪語しており、原告側の仲介業者らもこれに同調し、被告に対し、融資実現を保証していた。このようにして、原告は、本件特約により、被告の本件土地建物の他への有利な売却の機会を奪い、被告に対し、本件特約の期間中、契約の拘束をなした。売主たる被告のかかる負担をないがしろにし、単に本件ローン特約を機械的に適用して、本件契約を白紙にせんとする原告の主張は、信義則上からも許されるものではない。
2 原告から被告に対し、本件ローン特約期限内に、本件契約の解除がなされたか。
(原告の主張)
原告は、平成七年八月一四日、原告の仲介業者タイセイ住販の担当者鈴野和成に対し、あさひ銀行の住宅ローンの借入れができないことが確定してしまったので、本件契約を本件ローン特約に基づき解除するので、その旨、被告に対し意思表示してほしいと述べた。これを受けて、鈴野は、同日、原告の使者として、被告代表者八巻正に対し、電話にて、本件契約について、本件ローン特約に基づき、ローンが受けられなかったことを理由に解除する旨意思表示した。
(被告の主張)
被告は、原告から、本件ローン特約の有効期限の平成七年八月一四日までに、金融機関から融資が否決されたことを理由とする本件契約の解除の通知を受けていない。
3 原告は被告に対し、違約金支払義務を負っているか。
第三 争点に対する判断
一 《証拠略》によれば、次の事実を認めることができる(なお、以下において、認定事実中の括弧内の証拠は、当該認定事実とかかわる証拠を、特に再度掲記したものである。)。
1 原告は、本件土地建物を購入することにし、平成七年七月二二日本件契約を締結したが(甲三)、その売買代金総額四三〇〇万円のうち、銀行預金等をおろした資金で、同日手付金一〇〇万円と同月二四日中間金三三〇万円を支払った(《証拠略》)。そして、売買残代金三八七〇万円については、住宅ローンで三四四〇万円を借り入れ、その余は預金をおろして支払に充てる予定であった。
2 原告は、平成七年七月二五日、原告勤務先や原告の父親が社長をしている会社と取引関係にあり、利率等で優遇措置が得られるあさひ銀行初台支店に右住宅ローンを申し込んだ。
ところが、同月二七日、同支店担当者から原告に電話があり、同銀行が提携する住宅ローンの保証会社から、短期間に何件もの会社及び個人に正当な売買という形態をとらずに所有権移転が行われている不明点があるとの指摘を受けているので、説明してほしい旨告げられた。そこで、原告は、同月三一日、同支店担当者を訪れ、不明事項とされる点を詳しく確認し、所有権移転の経緯を、売主に確認し、右担当者に結果を報告することになった。原告は、同日、本件売買契約の原告側仲介業者である株式会社タイセイ住販の営業部長森若博文、本件売買担当者鈴野和成に対し、右あさひ銀行支店担当者から受けた説明を伝え、その不明点とされる事項の確認を依頼した。
更に、原告は、同年八月三日、あさひ銀行支店担当者から、本件土地建物に東京地裁へ訴え提起を原因とする予告登記とその抹消がなされていることについても、説明を求められた。そこで、原告は、同月五日、タイセイ住販の社長秋山義巳及び鈴野に会い、同人らに対し、更に、本件土地建物の所有権移転にかかわる点と、右裁判内容等の調査を依頼した。
また、同月五日の原告と秋山及び鈴野との右話合いで、タイセイ住販が、被告に対し、本件土地建物の所有権移転の経緯と訴訟に関する事項を確認するほかに、あさひ銀行からの住宅ローンの借入れ手続が遅れているので、本件ローン特約の適用期限の延長が可能かを尋ねることになった。
3 タイセイ住販の秋山は、同月七日、被告代表者の八巻から本件土地建物に関する和解調書の写し(甲七)を入手したが、その際、八巻に対し、本件ローン特約の適用期限を延長することが可能かを打診したところ、同人から延長はできないとの話がなされた。
4 原告は、同月八日、タイセイ住販から受け取った右和解調書の写しを、あさひ銀行初台支店へファックス送信した。また、翌九日、原告の父親が右写しを同支店担当者へ手渡したが、その際、右担当者から原告の父親に対し、原告の銀行ローンの保証委託先のあさひ銀クレジットから、本件のローンについて保証できない旨の通知がきており(甲六)、あさひ銀行初台支店として、原告のローンの申込みに応じることができないと告げられた。
原告の父親は、その場で、仲介業者から受けた本件土地建物の所有権移転の経緯の説明と前記和解調書写しがあるのであるから、あさひ銀行初台支店から、再度、あさひ銀クレジットと交渉してほしいと依頼し、同支店は、あさひ銀クレジットと交渉することになった。しかし、同日夕方、あさひ銀行初台支店の担当者から原告の父親に対し、あさひ銀クレジットでは、既に審査が終了し、否決されているので、再審査はできないとされた、したがって、今回の原告のあさひ銀行初台支店への住宅ローンの申込みは実行できないとの連絡がなされた。
5 タイセイ住販は、平成七年八月九日から同月一六日まで夏期休業のため、その間、原告とタイセイ住販との連絡は、タイセイ住販の鈴野が原告に電話をすることになっていたところ、本件ローン特約の適用期限である同月一四日午前九時ころ、鈴野から原告に電話があった。そこで、原告は鈴野に対し、住宅ローンの貸付けが受けられないので、本件ローン特約に基づいて、本件売買を解除することを被告に伝えてほしいと述べた。また、この際、鈴野から、本件ローン特約の適用期限の延長を被告に依頼してみてはどうかとの提案があり、原告はこれを了承した。
鈴野は、同日午前一〇時ころ、被告の八巻に電話して、原告の住宅ローンの貸付けが受けられなかったこと、しかし、原告は他の方法を考えたいので、本件ローン特約の適用期限の延長を依頼したいと伝えたところ、八巻は手付金の没収を条件とするならば同月末日まで待つことは認めると述べたので、鈴野は、同日夕方、原告に電話して八巻の右意向を伝えたところ、原告は、手付金の返還を得られないという条件では無理だと考え、本件土地建物の取得を断念することにし、鈴野に対し、本件ローン特約より本件契約を解除することを被告に伝えるよう依頼した。
鈴野は、原告の右依頼を受け、同日夕方(午後五時一一分ころから同一五分ころ、(《証拠略》)、八巻に電話をし、本件ローン特約の適用により本件契約を解除する旨伝えた。
二 争点1(本件ローン特約による解除の可否)について
前項認定事実によれば、原告は、あさひ銀行初台支店から住宅ローンの貸付けを受けることを予定し、その申込みをしたにもかかわらず、保証委託会社から支払保証委託契約の締結を拒まれ、そのためあさひ銀行初台支店からの住宅ローンの貸付けも拒まれたことが認められ、本件ローン特約により、本件契約を解除することができるものといえる。
なお、被告は、本件ローン特約によって、被告は、その有効期限まで、たとえ他に有利な買手が出現しても、本件土地建物を原告以外の第三者に売却することを禁止される不利益を負担しているのであるから、その当然の反射的信義則上の効果として、原告はローンを得て、本件物件を買い取るための真摯な努力を傾注しなければならない義務を負っており、原告は適正妥当な金融機関に対してローンの実現に向けた申込みを行う義務があるところ、物件の権利関係に疑義があるなどとして、根拠のない理由を付け、最初からローンを実行する意思のないことが明らかな金融機関に対しローンの申込みをして、それで本件ローン特約の原告の申込み義務の履行は事足れりとされるものではないと主張している。しかしながら、前記認定のとおり、原告は、勤務先や原告の父親の勤務会社と取引のあるあさひ銀行初台支店を住宅ローン借入れ先に選択して、同支社にその申込みをしているのであり、同銀行が提携する信用保証会社の保証委託契約締結の拒否や、それに応じたあさひ銀行の住宅ローン貸付けの拒否が正当であったか否かとは関係なく、原告は本件ローン特約の申込み義務を果たしているものといえ、被告の右主張は採用できない。更に、付言するならば、被告の主張のとおりとすれば、一般にローン特約条項の適用を受けて不動産を購入しようとする買主は、ローンを申し込んだ金融機関からローン申込みが拒まれた場合、金融機関の拒否理由が正当か否かという自己が関与しない事項について責任を負わなければならないことになって、ローン特約条項を利用して不動産売買契約を締結すること自体が危険となり、ローン特約条項を付けて売買することに躊躇することになり、ローン特約条項により買主の利益を図ろうとする趣旨が没却されてしまうだけではなく、広くは、ローン特約条項を設けて売買を促進し、売主の利益をも図ることになることも阻害され、妥当とはいえない。
また、被告は、本件ローン特約は、ローン申込人たる原告の借受人適格に関する要件、例えば、原告の収入面における返済能力の問題、連帯保証人の保証能力に関する問題等の原告側の属人的要素により、ローンが否決された場合において、買主たる原告を本件契約から解放せんとする趣旨から設けられた規定であって、本件土地建物の物的事情により、ローン不適用を決定したあさひ銀行のローンは、本件ローン特約でいうところのローンには含まれないと主張するが、本件契約書(甲三)の条項にそのような限定はなく、更に、ローンを利用して不動産を購入しようとする者にとっては、ローンを受けられない理由が購入者の属人的要素であるか、目的物の物的事情によるものであるかにかかわらず、ローン貸付けが受けられない以上、代金支払に窮することになり、売買契約を解除する必要性があるものであって、被告の右主張は採用できない。
また、被告は、原告は本件契約締結当初から、ローンの借入れは絶対に大丈夫だと豪語し、原告側の仲介業者らもこれに同調し、被告に対し、融資実行を保証しており、このようにして、原告は、本件特約により、被告の本件土地建物の他への有利な売却の機会を奪ったものであるから、本件ローン特約を機械的に適用する原告の主張は、信義則上許されないと主張する。しかしながら、たとえ、原告等からローンの借入れは大丈夫だとの話があったとしても、本件売買において、本件ローン特約が付せられている以上(甲三)、その適用期限までにローン特約を適用した解除があることはやむを得ないことであり、また、一般に、ローン特約は買主の利益のために付されるものであるが、右特約があることによって売買が促進されるという意味では、売主の利益も図ろうとするものといえ、売主である被告が、本件契約において、本件ローン特約を付すことに同調したものである以上、原告が、その要件を満たして本件ローン特約の適用により解除を主張することは、信義則上許されないものとはいえず、その他、前記一項認定の事実によれば、原告が本件ローン特約の適用を主張することが信義則上許されないような特段の事情も認められない。したがって、被告の右主張は採用できない。
三 争点2(原告からの期限内の解除の有無)について
前記一項認定の事実によれば、本件ローン特約の適用期限である平成七年八月一四日夕方(午後五時一一分ころから同一五分ころ)、原告から依頼を受けた鈴野が八巻に電話をし、本件ローン特約の適用により本件契約を解除する旨伝えたことが認められる。
なお、被告は、右解除の連絡を受けたことを否認するが、前記認定を覆すに足りる証拠はない。
四 よって、原告は、本件ローン特約の適用により本件契約を解除したことが認められ、原告の被告に対する原告の支払済みの手付金及び中間金合計四三〇万円と、原告が被告に右金員の返還を求めたが払おうとしない状況が続いた(争いがない事実)後である本件訴状送達の翌日である平成七年一一月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による右四三〇万円に対する遅延損害金の支払を求める本訴請求は理由があり、既に原告により本件契約が解除されている以上、争点3(原告の違約金支払義務)について判断するまでもなく、被告の原告に対する反訴請求は理由がない。
(裁判官 本多知成)